人類学という分野はとても面白そうだと思っていたので、手に取ってみた本です。
ミトコンドリアDNAを主な対象として、出アフリカから日本列島までヒトがたどってきたみちを分子遺伝学の立場からわかりやすく描いています。
著者の前著に『DNAで語る 日本人起源論』がありますが、その発展という位置づけの一冊ですね。
生物学や解析法の言葉が少し突飛にでてくるところがありますが、全体を通じて非常にわかりやすく、読みやすいです。
ミトコンドリアDNAは細胞の核にあるDNAとは異なり、母系のみ、すなわちお母さんからのみ伝わるDNAで、これらのグループであるハプロタイプ解析でヒトがどのように世界に広がっていったのかを描いていきます (ちょっと古い話ですが、「パラサイド・イヴ」というこれをテーマにした小説がありましたね)。
日本に多いハプロタイプの解説、縄文人と弥生人、琉球・沖縄とアイヌと本土日本人たちとの関係性、大陸・半島から渡ってきた人たちとの関係性、人類学者として謙虚にわかりやすく解説されています。
主にミトコンドリアDNAの話題であるものの、Y染色体や形質人類学とも絡めて、簡単にはわからない、ということや、まだまだわからないということ、非常に夢のある分野であることがよく伝わってきます。
遺伝子はシャッフルされて拡散するが、先祖方向をみても拡散していき、現世代でみればみなが遺伝子をシェアしているんですね。
ミトコンドリアDNAだけでさえ、本当に共通のものが国境など簡単に超えて関係がみられ、「人類みな兄弟」だなぁと実感させられました。
至って謙虚にご自身の専門分野を一般にわかりやすく伝える筆致で、科学読本であるが、終章では国家や民族、隣国などというものは遺伝人類学のスケールで人類をしり、広い視野からみなおせばもっと人類の兄弟愛・平和について思い至るのでは、との考えはこの本を読んでいくと、本当にすんなり受け入れられるように思います。。
人類みな兄弟だなぁとつくづく思いました…。