人気の「怖い絵」シリーズ。「怖い絵展」も開催されました。
著者の中野京子さんはドイツ文学者、でありまた、西洋文化史家でいらっしゃいます。
この「怖い絵」シリーズは、2007年の「怖い絵」から続くシリーズもので、怖さを感じさせる、怖い事実を伴う、名画を通じて、ヨーロッパ史や人間のさまざまな怖さをあぶりだすそんなエピソード集です。
著者の中野さんの知識は抜群に多く深い。淡々とした筆致で、新たな知識だけでなく、絵の味方やその背景まで、情報と感じ方が一気に入ってくる。
本書は「泣く女篇」となっていますが、「泣く」「女」性の絵は紹介される22の作品のうち数点。題名はさておき、読みやすくわかりやすく、そして作品の選択がやはりよい。
「怖い」という印象は人によって異なるでしょうけれど、「不気味な」とか「深遠な」とかも含む、そういう絵画。ただ、本当に怖いのは「絵」ではなく、人間、人間そのものなのだ、とつくづく思わされます。
解説エッセイとして、秀逸です。
おすすめ。★★★★☆ (4/5)。
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